6月20日実施 全国世論調査の分析と結果
「新ミックス・モード調査」による有権者の政治意識の探索
社会調査研究センターでは、2020年6月20日(土)に、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)を対象とするショートメールと固定電話を対象とするオートコールとを複合させた、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 方式」を採用しています (調査方法の詳しい解説については、「社会調査研究センターの『新ミックス・モード調査』」を参照していただきたい) 。
新方式のノン・スポークン調査による全国世論調査は4月から開始し、すでに4回実施しました。このリポートでは、定例で質問している内閣支持と政党支持の結果をもとに、有権者の政治意識を探索します。
先ず、〔表1〕は、4回の調査における、安倍内閣の支持率および主要政党の支持率を示しています。4月当初に44%だった内閣支持率は、5月の下旬には「黒川スキャンダル」などの影響で27%に低落しました。通常国会の閉幕した一カ月後の6月調査では36%に回復したものの、不支持率の56%を大きく下回っています。自民党の支持率も、5/23調査の25%から6/20調査では31%に回復しました。
政党支持率の結果で注目されるのは、やはり、日本維新の会(以下、維新)の動向です。4/8に5%に過ぎなかった支持率が、5/6調査では吉村大阪府知事人気を追い風に11%へと倍増しました。その後は11%で安定し、立憲民主党(以下、立民)と支持率を競い合っています。一方、支持政党なしの無党派層は、常に3割以上を占めています。
〔表1〕内閣支持率と政党支持率の推移
■窮地こそ、頼りになるのは若者の支持
ここからは、年齢を指標に詳しく見ていきましょう。〔図1〕は、安倍内閣支持率の推移を年齢別にまとめたものです。全体比率が44%だった4/8の結果は、どの年代も4割を上回るフラットな形状(図中の実線―)で、満遍ない支持による安定的な構造が確認できます。ところが、27%に低落した5/23には、グラフの形状(点線…)が一変します。支持率の急落度合いは、60代を筆頭に中高年層で大きく、18~29歳の若年層はそれほどでもなかったため、右肩下がりの逆年功型にシフトします。安倍内閣の支持構造の特性は、若者の高支持率にあると言われてきました。ただ、それは、支持率が高値安定であることの理由として指摘されてきたのであり、支持率の低落によって以前の構造が復活するという今回の傾向は、若干脈絡が異なります。
支持率が36%に回復した6/20調査の結果(二点鎖線)は、18~29歳および30代の若年層の支持率が4/8の水準に戻ったのに対して、60代や70歳以上の高年層の支持率は依然として5月23日の水準にとどまっており、「若高-老低」型の構造が一層顕著になりました。いずれにせよ、若者の支持が支える安倍内閣に他なりません。
〔図1〕安倍内閣支持率(年齢別)
■不安定な自民党支持構造
今度は、内閣支持と自民党支持とを比較検討してみましょう。〔図2〕は、3回の調査(4/8・5/23・6/20)の年齢別比率をまとめたものです。4/8の結果には、どの年代においても、内閣支持率 > 自民党支持率という共通傾向が存在しています。グラフの形状も、内閣のフラット型に対し、自民党の方は、年代間の相違の幅はそれほど大きくはないものの、「若低-老高」の年功型という55年体制当時の構造が見受けられます。
5/23調査では、グラフが相似し、各年代の比率も接近したため、重なりあう形状に変容します。内閣、自民、双方とも支持率が最も高いのは若年層です。「窮地にこそ若者の根強い支持が頼り」なのかもしれません。直近の6/20調査結果をみると、内閣支持の回復と自民党支持とが連動せず、若年層における両者の比率の開きが大きくなっています。高い内閣支持率が自民党支持率を引っ張るという相関関係は、もはや過去のことになったのでしょうか。自民党支持の構造に注目すれば、4月の「若低-老高」の年功型が、5月には若者と高齢者の両極が高い「U字」型に、そして6月は年齢による特性のない「フラット」型へと、わずか三か月の間にそのつど変容しています。比率の絶対値はともかく、相応に不安定な支持構造が示唆されます。
〔図2〕内閣支持率と自民党支持率(年齢別)
■支持なし層のシフト先は維新か
自民党の支持構造が不安定だとはいえ、問題はそれに対抗する野党の支持はどうなのかということです。〔図3〕を参照してください。立民、維新、支持なしに関して、それぞれの支持者の年齢構成を算出したものです。〔図1〕・〔図2〕でみてきた年齢別の支持率は、各年代を100%として、それぞれの年代における内閣支持率や自民党支持率を示しています。それに対して、支持者の年齢構成とは、各政党の支持者を100%として、それぞれの年代が支持者全体に占める割合を意味します。例えば、図中のA政党のグラフにおける40(40~49)代の比率が20%だとすれば、A政党の支持者全体の中で40代が占める割合に相当します。各政党の支持者の平均年齢のようなものだと思ってください。各党の比率は、維新の支持率が上昇した5/6以降の3回の調査結果の平均値を採用しています。維新や立民の支持率からして、年齢にブレークダウンするときには、各回の調査におけるサンプル構成の偏りをある程度相殺できるからです。
有権者中の相対的多数を占める支持なし(点線)をみると、50代を頂点にほぼシンメトリーになっており、年齢構成上のバランスがとれていることが確認できます。 支持なしと類似した形状を示しているのが維新(実線)です。支持なしとのシンクロ、すなわち、支持なしに代表される、いわば「普通の人々」の最も有力なシフト先となる可能性を示唆しています。対照的に、立民(二点鎖線)は急こう配の右肩上がりで、現在の高齢者への極端な依存状況が顕著です。今後は、有権者の世代交代による縮小再生産過程にどう抗っていくのかという、難しい課題が待ち受けているように思われます。
〔図3〕支持者の年齢構成(5/6・5/23・6/20:3回平均)
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6月20日全国世論調査の結果は以下の通りです。
「毎日新聞提供」