調査実績

4月の4選挙で実施 ドコモメール調査

 社会調査研究センターは4月に行われた衆参3選挙(25日投票)と福岡県知事選(11日投票)で「ドコモメール方式」の投票行動調査(新出口調査)を実施した。  
 ドコモメール方式とは、NTTドコモの携帯電話ユーザーを中心とする「プレミアパネル」(dポイントクラブ)から対象者を無作為に抽出し、NTTドコモのキャリアメール「メッセージR」で回答を依頼するインターネット調査の一種。調査への協力を承諾した回答者は、スマートフォンのブラウザ画面で質問に答える。NTTドコモと毎日新聞社、社会調査研究センターが協力して開発した新たな調査方式だ。  
 プレミアパネルでは、NTTドコモのポイントサービス「dポイントクラブ」の会員を対象にインターネットを通じてアンケートができる。会員はNTTドコモの携帯ユーザー以外にも広がり、全国5000万人を超える巨大パネルとなっている。社会調査研究センターとしては、日本の有権者の2人に1人をカバーする母集団を対象に無作為抽出調査ができることから、国民の縮図を探る世論調査に近似した調査が可能と考えている。  
 従来の電話調査は、コンピューターが無作為に組み合わせた番号に電話をかけるRDD法(毎日新聞の用語ではRDS法)によって国民全体を概ねカバーした調査ができると考えられてきた。しかし、近年、固定電話調査については保有率・回答率の低下、携帯電話調査についてはそもそも回答率が低いことに加えて企業保有の回線が増えたことが調査精度への信頼性を低下させている。  
 プレミアパネルは、スマートフォンに紐づいたdポイントサービスを受ける個人で構成されている。ある個人が複数のスマホを持っていたとしても、複数のdポイント番号で会員登録をしていることは想定しにくい。調査対象者が保有している電話回線数を気にすることなく、シンプルに無作為抽出ができる。何よりも、携帯RDD調査では難しい、地域を限定した無作為抽出調査ができるメリットは大きい。  
 ドコモメール調査においても、メール配信件数に対する回答率は数パーセント未満にとどまる。一方、配信から2時間程度で集計・分析に十分なサンプル数が取得できるため、投票当日の夕方にメールを配信し、投票に行った人に「誰に投票しましたか」と尋ねる調査が可能だ。  
 報道各社が多くの投票所の出口に調査員を配置し、投票を済ませた有権者に投票先を聞く「出口調査」を実施する目的は「①開票が進む前に当落を速報する」「②男女別・年代別・支持政党別などの投票行動を分析する」の二つ。しかし、期日前投票も含めて十分なサンプルを得るには相当の労力とコストがかかる。ドコモメール方式であれば、投票当日と期日前の別なく短時間で調査できる。新型コロナウイルスの感染拡大リスクを伴う対面調査を避けることもできる。社会調査研究センターはこれを「投票行動調査」(新出口調査)と名付けた。  
 4月の調査では、従来の出口調査に劣らないデータが得られた。詳細は以下の通り。


【衆院北海道2区補選】  
 HBC北海道放送、毎日新聞と共同で投票行動調査を実施し、1769人が投票先を答えた。収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相(自民党を離党)の辞職に伴う補選で、自民党は候補擁立を見送り不戦敗。当選した松木謙公氏(立憲民主党)のほか5人が立候補し、開票結果における各候補の得票率と調査結果がほぼ一致した。

【参院長野選挙区補選】  
 NBS長野放送、毎日新聞と共同で投票行動調査を実施し、1788人が投票先を答えた。立憲民主党の羽田雄一郎元国土交通相が新型コロナウイルス感染症で死去したことに伴う補選で、立憲新人の羽田次郎氏(雄一郎氏の実弟)が自民新人との事実上の一騎討ちを制した。その開票結果は調査結果とほぼ一致した。  
 4月17日にはNBS長野放送と共同でドコモメール方式の情勢調査も実施し、2500人から有効回答を得た。調査結果は開票結果とほぼ一致した。  
 NBS長野放送から4月20日と25日のニュース映像をご提供いただきました。

4月20日 NBS長野放送



4月25日 NBS長野放送(1)


4月25日 NBS長野放送(2)

 
【参院広島選挙区再選挙】  
 毎日新聞と共同で投票行動調査を実施し、1854人が投票先を答えた。公職選挙法違反で有罪が確定した河井案里元参院議員(自民党を離党)の当選無効に伴う再選挙で、立憲民主党などが推薦した宮口治子氏が自民新人との事実上の一騎討ちを制した。調査結果は開票結果より宮口氏の優勢度合いが強めに出た。大規模買収事件があっても「後ろめたさ」を感じながら自民新人に投票した保守層の声を捕捉し切れなかった可能性が考えられ、今後、同様のケースの選挙に向けて分析手法の改善が課題となる。

【福岡県知事選】  
 RKB毎日放送、毎日新聞と共同で投票行動調査を実施し、1924人が投票先を答えた。前知事の辞職に伴う選挙で、元副知事の服部誠太郎氏が共産党系新人を大差で破った。開票結果における得票率は81%対19%。調査結果はこれより若干、差が開いたが、共産党を除くオール与党候補と共産党系候補の対決構図になった場合、オール与党候補に強めに出る傾向は従来の出口調査や情勢調査と同様と言える。  
 RKB毎日放送から4月26日のニュース画像をご提供いただきました。

4月26日 RKB毎日放送