調査実績

6月19日実施 全国世論調査の分析と結果

五輪開催をめぐり、意識対立が顕在化
- 内閣支持の構図にも変化が -

松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)

 
 社会調査研究センターでは、6月19日(土)にRDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)へのSMS(ショートメッセージ機能)と固定電話へのオートコールとを複合させた、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 調査」を採用しています。有効回答者数は、携帯766人、固定351人、計1,117人でした。
 ノン・スポークン方式の世論調査は20年4月から開始し、今回は16 回目になります。

■内閣支持、コロナ対策評価、ともに微増
 今月の菅内閣支持率は34%、不支持率は55%でした。また、菅政権の新型コロナウィルス対策にかんする評価は、「評価する」が21%、「評価しない」は60%になりました。〔表1〕に明らかなように、内閣支持率、政府のコロナ対策評価、双方とも5月と比較して微増となりました。
 

〔表1〕 菅内閣支持・不支持率とコロナ対策評価

 〔表2〕の年齢別内閣支持率の推移で、5月と6月を比較すると、18~29歳や40代、50代などにはほとんど変化がないものの、高齢層では、60代(+9ポイント)、70歳以上(+10ポイント)と比率が上昇しています。ワクチン接種が進んでいることの反映であろうと推測されます。実際、今回の回答者における「すでに接種を受けた」の割合は、全体で12%(5月は3%)、わけても70歳以上では35%(同5%)を占めています。
  高齢層とは対照的に、5月に支持率が大きく低落した若年層では、18~29歳が±0、30代は-6ポイントと、減少傾向が続いています。
 

〔表2〕 菅内閣支持率の推移(年齢別)

■内閣支持率 : 「若高-老低」型からフラット型へ
 菅内閣にかんする支持と不支持の付置関係を確認すると、これまでは、〔図1〕の上段、すなわち20.12および21.4のように、中高年層は不支持>支持、若年層は支持>不支持という、クロス構造が続いていました。4割前後という低位で推移する内閣支持率を支えるのは、「若年層における安定的な支持」にほかなりません。
 ところが、ここ2か月の調査結果には、変容が見受けられます。〔図1〕の下段、21.5および21.6を参照してください。若年層を含め、すべての年代で不支持が支持を大きく上回っています。それにともない、内閣支持率における右肩下がりの「若高-老低」型構造にも変化が生じています。
 

〔図1〕 菅内閣支持率・不支持率(年齢別)

 〔図2〕は、菅内閣の年齢別支持率の推移を示しています。菅内閣の発足直後の20.9は、全体の高支持率(64%)とともに、「若高-老低」型の支持構造が存在しています。支持率が38%に低落した21.2においても、右肩下がりの構造は維持されていることがわかります。しかしながら、今回の21.6では、全体の支持率(34%)にほとんど変化がないにもかかわらず、支持構造が、これまでの「若高-老低」型から、年齢にそった特色のない「フラット型」へと変わっています。
 安倍内閣の後継として登場した菅内閣は、高支持率に加え、若者の支持という(安倍内閣の)資産も引き継いできました。いよいよそれを手放してしまったのか。それとも、若年層の支持率は再び反転するでしょうか。

〔図2〕菅内閣支持率の推移(年齢別)

■「支持」・「不支持」を弁別する東京五輪
 ここからは、コロナ問題、東京五輪というアドホックなイシューと内閣支持・不支持との関係を確認してみましょう。〔表3〕を参照してください。
 先ず、コロナ問題。表中一番左のカラムは「政府による緊急事態宣言の解除を、どう思いますか」に対する、「妥当だ」=40%、「解除を急ぎすぎだ」=54%の回答ごとの、左から二番目は「(日本における)コロナウィルスの感染状況が今後どうなると思いますか」に対する、「収まっていくと思う」=27%、「再び拡大すると思う」=53%という回答別の、それぞれ内閣支持率・不支持率を比較したものです。二つの質問に対する回答の方向が、内閣を「支持する」・「支持しない」の弁別要素となっていることが読み取れます。
 次に、東京五輪。表中右から二番目のカラムは「東京オリンピック・パラリンピックについて、政府は国内の観客を入れて開催することを検討しています。これをどう思いますか」に対する「妥当だ」=22%、「(国内の観客も入れずに)無観客で開催すべきだ」=31%、「中止すべきだ」=30%の回答別の内閣支持率・不支持率を示しています。「無観客で開催すべきだ」回答を中間派として、「妥当だ」は支持派、「中止すべきだ」は不支持派という顕著な相違が存在しています。右端の「東京オリンピック・パラリンピックを安全、安心な形で開催できると思いますか」に関する「できると思う」=20%、「できるとは思わない」=64%についても、内閣を「支持する」・「支持しない」を弁別していることが明らかとなります。

〔表3〕コロナ問題、東京五輪 × 内閣支持・不支持

 

 コロナ問題もさることながら、東京五輪をめぐる意識の対立が顕著です。「開催」の方向が示されたことで、心情のゆれる人々を挟む形で開催派と中止派の両極化が生じていると推測されます。東京五輪が、社会の分断要因となりつつあるように思われます。

 

「東京オリンピック・パラリンピックの開催に関する自由記述回答」についてはこちら
 

6月19日全国世論調査の結果は以下の通りです。





 

「毎日新聞提供」