調査実績

7月17日実施 全国世論調査の分析と結果

迫る五輪、広がる不安
- 若年層ほど「安全、安心」に懐疑的 -

松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)

 
 社会調査研究センターでは、7月17日(土)にRDD方式による定例全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)へのSMS(ショートメッセージ) + Web(インターネット)、および、固定電話へのIVR(オートコール)を複合した、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 調査」を採用しています。有効回答者数は、携帯746人、固定341人、計1,087人でした。

■菅内閣支持率、最低の30%、不支持率は62%
 今月の菅内閣支持率は、前回(6月)から4ポイント低下し30%に、不支持率は7ポイント上昇し62%となりました。〔表1〕に明らかなように、支持率30%は、昨年9月の菅内閣発足以来の最低値、逆に、不支持率62%は最高値に相当します。
菅政権の新型コロナウィルス対策にかんしては、「評価する」が19%(前月比2ポイント減)、「評価しない」は65%(同3ポイント増)となりました。
 酒の提供停止にかんする西村担当大臣の発言、それをめぐる政府の対応、さらには、ワクチンの供給不足問題などが影響しているものと推測されます。例えば、ワクチン接種について、「(順調に進んでいるとは)思わない」とする回答は、6月の52%から4ポイント増加し56%になりました。増加分は内閣支持率の減少分に相当します。ワクチン関連では、また、「すでに接種を受けた」とする回答の比率も、6月の12%からは確かに上昇したとはいえ、29%にとどまっています。
 

〔表1〕菅内閣支持・不支持率とコロナ対策評価

■内閣支持の「若高-老低」型は消え、「支持率」<「不支持率」の差が広がる
 先(6)月の結果解説でも紹介しましたが、内閣支持・不支持の年齢別構造に変化が生じています。
菅内閣にかんする支持と不支持の付置を確認すると、これまでは、〔図1〕の上段、すなわち20.12~21.4のように、中高年層は不支持>支持、若年層は支持>不支持という、クロス構造が続いていました。4割前後という低位で推移する内閣支持率を支えるのは、「若年層における安定的な支持」にほかなりませんでした。
 ところが、5月以降、この構造が変化し始めました。〔図1〕の下段、21.6および21.7を参照してください。若年層を含め、すべての年代で不支持が支持を大きく上回っています。それにともない、内閣支持率における右肩下がりの「若高-老低」型(図の上段)から、年齢にそった特色のない「フラット」型(図の下段)へと変わっています。
 下段の6月と7月とを比較すると、各年齢における支持率と不支持率との差は、さらに広がりました。今後、支持率が反転上昇する可能性はあるのでしょうか。
 

〔図1〕菅内閣支持率・不支持率(年齢別)


■五輪開催への懐疑的な見方、若年層で高く
 若年層における、内閣支持率低落の要因について、ちょっと探ってみましょう。
 今月の調査結果に、その一端を示唆する傾向が存在します。〔図2〕を参照してください。「東京オリンピック・パラリンピックを安全、安心な形で開催できると思いますか」に対する、「できると思う」= 19%、「できるとは思わない」= 65%の回答比率を年齢別にまとめたものです。

〔図2〕「東京オリパラは安全、安心な形で開催できるか」(年齢別)

 先ず、「できると思う」については、全体的な低比率の中でも、最若年層の18~29歳が9%と極端に低い数値であることが注目されます。次に、「できるとは思わない」にかんしても、18~29歳が71%で最も高く、30代が68%で続いています。「安全、安心」は、菅首相が東京オリンピック・パラリンピックを開催するための絶対条件として繰り返し強調する、いわばキーワードにほかなりません。しかしながら、その発言や姿勢に対しては、若年層ほど懐疑的であることが判明します。
 オリンピック関連でもう一つ、今度は〔図3〕を参照してください。今回の調査では、「東京オリンピックは、ほとんどの競技が無観客で開催されますが、これをどう思いますか」という質問を採用し、三つの選択肢の回答比率は、「妥当だ」= 36%、「観客を入れて開催してほしかった」= 20%、「延期か中止にしてほしかった」= 40%となりました。

〔図3〕「東京オリンピックの無観客開催について」(年齢別)

 〔図3〕は、このうち「延期か中止に…」と「観客を入れて…」について、年齢別の比率をプロットしたものです。「延期か中止に」をみると、グラフの形状は、跛行性はあるものの、右肩下がりの「若高-老低」型を示しています。延期・中止派は、若年層で多数を占めているのです。
 一方、「観客を入れて」にかんしては、右肩上がりの年功型グラフで、有観客開催を望む比率は、18~29歳や30歳の若年層で最も低い値を示しています。日々、映像メディアに流れる街中の若者たちの姿とは、大きく異なる若年層の心性が示唆されるでしょう。このギャップをみなさんはどう解釈されますか。
 さて、社会調査研究センターの定例全国世論調査では、スマートフォン調査の対象となったみなさまに、毎回、自由回答質問をお願いしています。6月の調査では、「東京オリンピック・パラリンピックの開催について、ご意見をご自由にお書きください」とお聞きしました。回答者のうち、なんと7割を超える方々から、いろいろなご意見を頂戴しました。掲載への同意をいただいたご意見はすべて、匿名性を担保する形で、当社のウェブサイト(https://ssrc.jp/)の「調査結果一覧」中の「6月19日実施の全国世論調査結果」に掲載させていただいております。これらの自由回答を拝見すると、東京オリンピック対する、みなさまの割り切れない思いが、年齢を越えて共有されていることが確認できます。ご意見ありがとうございました。


  7月17日全国世論調査の結果は以下の通りです。







 

 

「毎日新聞提供」