調査実績

9月18日実施 全国世論調査の分析と結果

 
総選挙の投票予定 : 自民が立憲民主を大きく引き離す
- 自民党の新総裁、世論のお好みは河野太郎氏 -              
松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)  

 

  社会調査研究センターは、9月18日(土)にRDD方式による定例全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)へのSMS(ショートメッセージ) + Web(インターネット)、および、固定電話へのIVR(オートコール)を複合した、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 調査」を採用しています。有効回答者数は、携帯732人、固定311人、計1,043人でした。   

■ 菅内閣、最後の支持率は37%
 9月3日(金)、菅義偉首相が唐突に退陣を表明するという出来事が起こりました。菅政 権最後の支持率は37%、不支持率は55%となりました。支持率は、最低を記録した 前回(8月)から11ポイントの上昇です。内閣支持率と連動し続けてきた「菅政権の新型コロナウィルス対策評価」も、「評価する」が19ポイント増の33%になりました。〔表1〕を参照してください。  
 世論調査における内閣支持質問とは、本来、当該内閣が今後も続くことを前提に聞くものであり、辞めることが決まっている内閣への評価は、「支持・不支持」の脈絡がこれまでとは異なることに、留意が必要だと思います。因みに、今回の調査で「菅義偉首相が退陣することについて」聞いた結果は、「妥当だ」が60%と多数を占めました(「首相を続けてほしかった」= 15%、「どちらとも言えない」= 24%)。

〔表1〕菅内閣支持・不支持率とコロナ対策評価


■ 菅内閣の1年 : 支持構造の比較
 次に、〔図1〕をご覧ください。菅内閣は、ちょうど1年前の2020年9月16日に発足しました。直後の9月17日に社会調査研究センターが実施した全国世論調査では、64%という高支持率を獲得しました。図中の実線が年齢別の支持率に相当します。若・中年層を中心に各年代から高い評価を得たことが確認できます。
 菅内閣の支持率は、新型コロナウィルスの感染拡大にともない、20年の12月に支持率と不支持率が逆転しました。それ以降、21年4月までの間は、中高年層は不支持>支持、若年層は支持>不支持というクロス構造が続き、5月からはすべての年代で不支持が支持を上回るようになりました。不支持率と支持率の差は、6月、7月と徐々に拡大し、支持率が最低の26%を記録した8月には、すべての年齢で大きな開きが生じました。年齢別の支持構造も、これまでの「若高-老低」型からフラット型へと変わりました。
 図中の点線が、今月、すなわち1年後の比率です。支持の構造こそ、「若高-老低」型の特徴がみられるものの、支持率自体は各年代共通に低く、不支持率が支持率を大きく上回ったまま、終結に至りました。

〔図1〕年齢別菅内閣支持率

 

■ 自民党総裁選 : 世論のお好みは河野太郎氏
 さて、菅総裁の後継を決める自民党の総裁選が9月17日に告示され、4人が立候補しました。告示翌日に実施した今回の調査では、有権者に対して「誰に自民党の総裁になってほしいですか」と聞きました。その結果は、河野太郎氏43%、高市早苗氏15%、岸田文雄氏13%、野田聖子氏6%の順となり、「この中にはいない」が15%、「関心がない」が8%を占めました。参考までに、回答者全体のうち37%(386人)に相当する自民党の支持者にしぼって集計すると、河野氏50%、高市氏25%、岸田氏14%、野田氏3%で、比率はともかく、順位に変化はありませんでした。ただし、自民党の総裁選挙の有権者は、あくまで同党の党員・党友に限られます。
 ここでは視点を変え、特定の候補者名を選択した回答者を、その候補の支持者と想定し、支持者間の比較をしてみたいと思います。比較の基準には、今回の調査で意見が割れた三つの質問を採用します。三つの質問とは、「菅政権の1年間を評価しますか」(「評価する」= 40%・「評価しない」= 40%)、「(日本でも)ワクチン接種を国民に義務づけるべきだと思いますか」(「義務づけるべきだ」= 43%、「義務づけるのは問題だ」= 46%)、「秋篠宮家の長女眞子様が結婚されると報じられていますが、どう思いますか」(「祝福したい」= 38%、「祝福できない」= 35%)が相当します。
 〔表2〕をみると、先ず、「ワクチン接種の義務づけ」に関して、「すべきだ」が多数を占めるのは河野支持者のみで、2人の女性の支持者は、「問題だ」が多数で比率もまったく同じです。また、菅政権の評価と眞子様のご結婚については、高市支持者と野田支持者が対極に位置し、中間に男性2人の支持者が付置する構図です。とりわけ、菅政権の評価に関して、高市支持者は肯定派、野田支持者が否定派という明確な特徴が存在します。有権者の間で、言い換えるならば社会において、各候補者がどのようなイメージで認知されているのかを示唆してくれる結果だと思います。

〔表2〕自民党総裁選候補者の弁別要素

■ 政党支持 : 自民党支持率が11ポイント上昇
 来たる9月29日に自民党の新総裁が決まると、新内閣の発足を経て、衆院選が行われます。自民党の総裁選が注目され、投票資格のない有権者にまで「誰が望ましいか」を問うのは、総選挙に直結しているからに他なりません。
 〔表3〕は、主要政党の支持率を示しています。前回(8月)の調査で26%に低落した自民党の支持率は、11ポイント上昇し37%となりました。比率、上昇度、ともに内閣支持率と全く同じ軌跡をたどっています。菅首相退陣、自民党総裁選の相乗効果は明らかでしょう。対する第一野党の立憲民主党の支持率に変化はありませんでした。自民党支持率の増加幅は、支持政党なし(8ポイント減)と維新(3ポイント減)の減少幅できれいに相殺されます。

〔表3〕内閣支持率と主要政党支持率の推移


 今度は、「次の衆院選の比例代表では、どの政党に投票したいですか」質問の結果はどうでしょうか。自民党は、支持率と同じく(対前月)11ポイント増の35%に、立憲民主党は増減なしの14%でした。両党の比率を年齢別にプロットした〔図2〕をご覧ください。立憲民主の形状にほとんど変化がみられないのに対して、自民は、18~29歳を除くすべての年齢で比率が上昇しています。図中左側の8月の結果では、60代と70歳以上の高年齢層で両党の比率が拮抗していましたが、9月は、すべての年齢で差が開きました。
 来月には、新しい首相が誕生します。新内閣の発足による引き上げ効果で自民党支持率が再上昇し、自民-立憲民主間の差がさらに拡大するのかどうか。10月調査の結果が、来たるべき総選挙の情勢を指し示してくれるでしょう。 

〔図2〕衆院選(比例代表)での投票予定政党

 

9月18日全国世論調査の結果は以下の通りです。




   

「毎日新聞提供」