1月22日実施 全国世論調査の分析と結果
松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)
■ 内閣支持率 : コロナ対策評価と連動せず
今回の岸田内閣支持率は52%(昨年12月は54%)、不支持率は36%(同36%)で、支持、不支持ともに前回からほぼ横ばいでした。オミクロン株によるコロナウィルスへの感染が急拡大し、調査を実施した1月22日における1日の感染者数は全国で5万4,582人を数え、東京都だけでも1万人を超えるという、まさに「感染爆発」とも言うべき状況でした。にもかかわらず、内閣支持率に変動は見られませんでした。
岸田内閣の新型コロナウィルス対策への評価は、「評価する」が15ポイント減の31%、「評価しない」は13ポイント増の39%となり、両者の大小関係が逆転しました。「どちらとも言えない」も30%を占め、評価は三つに割れました。〔表1〕を参照してください。コロナウィルスの新規感染者数が増加すると内閣支持率が下落するという、これまで続いてきた傾向がみられなくなったことに加えて、「内閣のコロナ対策評価」と「内閣支持率」が連動しないという、新たな局面が現出したように思われます。
〔表1〕岸田内閣支持・不支持とコロナ対策評価
コロナ対策評価と内閣支持・不支持の関係を詳しくみてみましょう。クロス集計結果を、〔表2〕にまとめました。「評価する」≒「支持する」、「評価しない」≒「支持しない」という明確な相関関係が存在しています。ならば、なぜ「評価しない」が13ポイントも増加したのに、支持率に影響がないのでしょうか。ヒントは、前回(21.12)と今回(22.1)の比較にありそうです。先ず、13ポイント増加し相対的多数(約4割)を占めるようになった「評価しない」派に注目すると、支持率は全く減少せずに、かえって不支持率が減少しています。また、全体で3割を占める「どちらとも言えない」派は、支持率が11ポイント増加し、不支持率は14ポイントも減少しています。内閣の支持・不支持と内閣のコロナ対策評価、2つの指標間の関係性が明らかに変わったと解釈せざるを得ません。
〔表2〕「コロナ対策評価」×「岸田内閣支持・不支持」
■コロナ対策評価を分けるものとは ?
内閣支持・不支持と直結しないコロナ対策評価とは何を意味するのか、コロナ対策への評価を分ける要素とは何なのか、ちょっと探索してみましょう。
〔図〕は、岸田内閣のコロナ対策を「評価する」、「評価しない」、「どちらとも言えない」の比率を、年齢別にプロットしています。各選択肢の比率については、大小関係の順位にこそ違いがあるものの、どの年代でもほぼ三分されています。年齢を同じくする人たちの中に、ひとくくりにはできない相違、言い換えるならば、個人の事情による相違が存在するのかもしれません。
〔図1〕政府のコロナ対策評価〔年齢別〕
次いて、〔表3〕をご覧ください。今回の調査で採用した4つの質問に関する回答と、コロナ対策評価とのクロス集計結果を示しています。一番上のカラムは、「3回目のワクチン接種」質問に対する「早く受けたいと思う」=61%(全体の比率:以下同様)、「早く受けたいとは思わない」=21%との関係に相当します。コロナ対策を「評価する」人たちの「早く受けたい」比率の高さが読み取れるでしょう。岸田内閣の進めるワクチン3回目接種の前倒しへの期待を示唆しています。
〔表3〕コロナ対策評価を弁別するもの
上から二番目のカラムは、「オミクロン株の感染拡大」に対して、「とても怖いと思う」=34%、「怖いとは思うが、デルタ株ほどではない」=46%、「怖いとは思わない」=15%とのクロス結果です。「とても怖い」の割合は、評価する・しない・どちらとも言えない、すべてで共通しており、相違は存在しません。一方、「怖いとは思わない」については、「評価しない」人たちでの比率が高くなっています。ただ、「怖いとは思わない」と「デルタ株ほどではない」の合計比率は、評価する・しないにかかわらず、6割前後を占めています。
三番目のカラムは、「(新型コロナウィルス対策として)飲食店やイベントなどの経済活動を規制する必要があると思うか」に対する「規制が必要だ」=38%、「感染対策をとっていれば規制は必要ない」=55%との関係です。「評価しない」人たちでの「必要ない」の比率が高いものの、「評価する」、「どちらとも言えない」ともに「必要ないが」5割と多数を占めています。 興味深いのは、一番下に示した支持政党との関係です。全体の比率は、自民党=30%、立憲民主党=9%、日本維新の会=18%でした。「評価する」人たちにおける自民党支持率が50%と顕著に高いこと、他方、「評価しない」人たちでは日本維新の会が25%と相対的多数を占めており、志向性に違いが存在しています。
今回の調査結果からは、コロナへの警戒感や恐怖感が弛緩気味の世間の雰囲気に、岸田内閣が助けられているという現状が示唆されます。それゆえに、岸田首相としては、強い規制や対策は取りづらい状況にあるとも言えるでしょう。しかしながら、コロナウィルス感染の拡大がどこまで広がり、いつまで続くのか、見通しが立たない中で、内閣支持率の動向を重視する政権運営の是非が問われているように思われます。コロナ禍は、長らく続いてきた内閣支持率民主主義に転機をもたらすでしょうか。