3月19日実施 全国世論調査の分析と結果
社会調査研究センターは、2022年3月19日(土)、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)へのSMS(ショートメッセージ) + Web(インターネット)、および、固定電話へのIVR(オートコール)を複合した、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 調査」を採用しています。有効回答者数は、携帯718人、固定322人、計1,040人でした。
■岸田内閣 : 支持率48% vs 不支持率38%
今月の岸田内閣支持率は、前回2月の45%から3ポイント増の48%、不支持率は2月の46%から8ポイント減の38%となりました。前回は支持と不支持が拮抗しましたが、今月は支持率が不支持率を10ポイント上回りました。
〔表1〕は、岸田内閣の支持・不支持と、政府のコロナ対策への評価について、推移をまとめたものです。2月から3月へ、コロナ対策評価と内閣支持・不支持が連動するという、定番の関係がみられます。内閣の支持率と、コロナ対策を「評価する」比率は、上昇度がピタリと同じ3ポイントです。支持率の変化が微増であるのに対して、不支持率は8ポイント減と度合いが大きいのは、コロナ対策を「評価しない」とする比率が13ポイントも減少したことと連動していると推測されます。
〔表1〕岸田内閣支持・不支持とコロナ対策評価
1月の発令から続いてきた政府によるまん延防止等重点措置は、この21日で解除されることになりました。「まん延防止措置の解除」に対しては、「妥当だ」という評価が全体で65%と大多数を占め、「延期すべきだ」は24%にとどまりました。〔図1〕は、「妥当だ」の比率を年齢別にブレークダウンしたものです。70歳以上を除き、18~29歳、30代の若年層をはじめとして各年代共通に高い値を示しています。
〔図1〕「まん延防止措置」解除の評価(年齢別)
■若年層の支持率低迷で、「若低-老高」型が明確に
今度は、岸田内閣の支持率と不支持率を年齢別に確認してみましょう。〔図2〕を参照してください。支持率の形状は、〔図1〕の「まん延防止措置の解除」とは逆で、若年層で低く、年齢の上昇とともに比率の上がる典型的な「若低-老高」型を示しています。
〔図2〕内閣支持率(年齢別)
しかも、18~29歳、30代の若年層では、不支持が支持を上回っています。まん延防止解除に対する評価は高いにもかかわらず、支持率は連動せずに低迷したままです。なぜなのか。その背景を知りたいところです。
今回の3月調査では、まん延防止措置の解除を前提に、「あなた自身は、これからも身の回りのコロナ対策を心がけたいと思いますか」という質問を採用し、3つの選択肢を設定しました。全体の結果は、「これからもコロナ対策を心がけたい」が77%、「少しずつコロナ前に戻したい」が21%、「これまでもコロナ対策はしていない」が1%でした。
〔表2〕は、年齢別の回答比率をまとめたものです。「これからもコロナ対策を心がけたい」の割合は、右肩上がりの「若低-老高」型になっています。一方、「少しずつ前に戻したい」は逆の「若高-老低」型で、18~29歳と70歳以上の間には20ポイント以上の比率差が存在しています。内閣支持率の低迷した18~29歳と30代では、「少しずつ前に戻したい」と「これまでもコロナ対策はしていない」の合計比率が33%と相応のシェアを占めています。まん延防止措置の解除が「妥当だ」は、「当然だ」という含意なのかもしれません。コロナ対策による規制生活に、「もう辟易している」という若年層の気分が、内閣支持率に投影しているようにも思われます。
〔表2〕自分の身の回りのコロナ対策(年齢別)
■『核共有』について : 「議論すべきだ」が57%
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いています。日本の安全保障に関して、『核共有』という耳慣れないワードが政治家から発せられ始めました。『核共有』とは、アメリカの核兵器を日本に配備して共同で運用することを意味します。今回の調査では、「『核共有』の議論を求める意見について、あなたはどう思いますか」を問いました。
結果は、「議論すべきだ」が57%と多数を占め、以下、「議論すべきではない」の32%、「わからない」の10%となりました。〔表3〕は、内閣支持・不支持と『核共有』議論とのクロス集計結果をまとめたものです。日本の世論調査の定番である、憲法9条の改正に象徴される防衛政策の是非や評価に関する質問は、内閣支持や政党支持を弁別する機能を果たしてきました。ただ、〔表3〕のクロス集計結果をみると、内閣の支持派、不支持派、どちらとも「議論すべきだ」が多数を占め、値もほとんど相違がありません。この質問のキーワードは、『核共有』ではなく、「議論」ないし「議論すべきか」であり、これが「検討」や「検討すべきか」であったとしたら、回答比率が変わったかもしれません。
〔表3〕「内閣支持・不支持」×「核共有」について
言い換えれば、現時点では『核共有』と言われても、認知度は低く、ましてや政治的なイシューとしては認識されていないことを示唆しています。ウクライナ情勢や中国のパフォーマンスなど、今後の政治状況次第ですが、仮に、『核共有』が政策レベルの課題としてクローズアップされるような事態になると、報道機関の世論調査における質問ワードや選択肢の設定をめぐって、批判の応酬が展開されることが予想されます。いたいけな世論調査に罪はないのですが・・・。