5月21日実施 全国世論調査の分析と結果
松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)
社会調査研究センターは、2022年5月21日(土)、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)へのSMS(ショートメッセージ) + Web(インターネット)、および、固定電話へのIVR(オートコール)を複合した、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 調査」を採用しています。有効回答者数は、携帯733人、固定309人、計1,042人でした。
■岸田内閣 : 支持率53% vs 不支持率37%
今月の岸田内閣支持率は、前回(4月)から3ポイント増の53%、不支持率も同じく3ポイント増の37%となりました。支持・不支持を明らかにしない「答えない」の比率が、4月の15%から10%に減少し、支持・不支持の合計比率、いわば「意思表示比率」は9割となりました。
〔表1〕は、岸田内閣の支持・不支持と、政府のコロナ対策への評価について、推移をまとめたものです。コロナ対策を「評価する」は4ポイント増えて41%、「評価しない」は3ポイント減の31%で、「評価する」-「評価しない」間の差は、4月の1ポイントから10ポイントと二ケタに広がりました。岸田政権は、引き続き安定軌道上にあると言えるでしょう。
〔表1〕岸田内閣支持・不支持とコロナ対策評価
■内閣支持率 : 「若低-老高」型も変わらず
岸田内閣の支持率と不支持率を年齢別に確認してみましょう。〔図1〕を参照してください。支持率は、4月(左図)、5月(右図)ともに、若年層で低く、年齢の上昇とともに比率の上がる「若低-老高」の年功型、きれいな階段構造です。支持率に関する、18~29歳(38%)と70歳以上(65%)間の比率差は27ポイントに広がりました。
しかも、18~29歳、30代の若年層では、不支持が支持を上回っています。40代以上の中高年層では、4月から5月にかけて支持率の上昇がみられるにもかかわらず、若年層においては支持率が低迷したままで、かえって不支持率が増加しています。
〔図1〕内閣支持率・不支持率(年齢別)
■コロナ対策への評価 : 年齢差は変わらず
次に〔表2〕をご覧ください。岸田政権の新型コロナ対策の評価を年齢別にまとめました。表中( )内の数値は4月調査の結果に相当します。70歳以上の最高齢層をはじめとして、中高年層で「評価する」比率が上昇し、「評価する」>「評価しない」が明確に読み取れるでしょう。他方、18~29歳、および30代の若年層においては、逆の傾向、つまり「評価しない」>「評価する」が続いています。「評価する」=「若低-老高」、「評価しない」=「若高-老低」という、内閣支持・不支持と相似形の構造にほかなりません。
〔表2〕コロナ対策への評価(年齢別)
■原発再稼働への賛・否にも年齢差
さて、今月(5月)の調査で採用したトピック質問の結果の中で、年齢差が存在したのが「原発の再稼働を進めること」への賛否でした。〔表3〕がそのまとめです。
「賛成」の比率は18~29歳と30代の若年層で高く、年齢の上昇につれて比率が減少しています。一方、「反対」の比率は逆に、「若低-老高」の傾向が見受けられます。したがって、「賛成」>「反対」の比率差は、若年層で非常に大きく、高年層では拮抗していることが確認できます。ロシアのウクライナ侵攻をめぐるエネルギー供給の問題が影響しているのかもしれません。因みに、ロシアからの原油や石炭の輸入に関する対応を聞いた結果を年齢別に算出すると、「ただちにやめるべきだ」=「若低-老高」対「段階的にやめるべきだ」=「若高-老低」という傾向差が存在しています。
〔表3〕原発再稼働への賛否(年齢別)
■内閣支持・不支持を弁別するイシュー
最後に、質問間クロスの結果から、内閣の支持・不支持を弁別するイシューを確認しておきましょう。〔表4〕にまとめてみました。
表中のカラムの一番目、岸田内閣のコロナ対策については、「(内閣を)支持する」と答えた人たちは「評価する」=68% 、「評価しない」=8%、「支持しない」と回答した人たちは「評価する」=8% 、「評価しない」=68%と正反対で、コロナ対策評価が内閣の支持・不支持を区分する要素になっていることがわかります。四番目のウクライナ侵攻への政府の対応に関しても、内閣支持派の「評価する」が70%であるのに対して、内閣不支持派の「評価する」は36%と顕著な相違が存在しています。
他の質問に関してはどうでしょうか。例えば三番目、すなわち、「緩和すべき(43%)」vs「緩和すべきではない(41%)」と、対立意見が拮抗しあう「外国人の入国制限」の結果をご確認ください。比率の絶対値にこそやや相違はあるものの、岸田内閣の支持派、不支持派のどちらにおいても、「緩和すべき」と「緩和すべきではない」とが拮抗しています。
五番目の「ロシアからの原油や石炭の輸入」も、有権者の中で意見の対立が存在するイシューですが、内閣の支持派と不支持派間に志向性の違いは見受けられません。先ほど年齢差の項で取り上げた「原発の再稼働」についても、「反対」比率に相違は存在するものの、「賛成」比率に関しては支持派・不支持派間に大きな相違は見受けられません。加えて、下から二番目の「自衛隊が反撃能力を保有すること」という、すぐれてデリケートな政治的争点に関しても、内閣の支持・不支持を弁別するほどの明確な相違は確認できません。
〔表4〕内閣支持・不支持の弁別要素
政策への賛否と内閣への評価の間に明確な相関関係がみられない。これは果たして何を示唆しているのでしょうか。首相や政権が政策の主体としては認識されていないということなのでしょうか。内閣支持率は、時宜の政権のパフォーマンス評価から、現今の世情を評価する指標へと変容しつつあるのかもしれません。