調査実績

10月22-23日実施 全国世論調査の分析と結果

 
 岸田内閣支持26%、不支持62%
「dサーベイ」による世論調査を開始           

松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)  

■「dサーベイ」が世論調査の新たなスタンダードに
 社会調査研究センター(SSRC)は、22年10月22日(土)~23日(日)にかけて全国世論調査を実施しました。調査の方法は、先月までの、携帯電話へのSMS + Webと固定電話へのIVRとをミックスした「ノン・スポークン (Non-spoken)」方式から、「dサーベイ」調査に一新しました。回答者数は、3,072人でした。 
 「dサーベイ」とは、NTTドコモのプレミアパネルを活用するインターネット調査です。プレミアパネルは、NTTドコモの「dポイントクラブ」会員のうち、パーソナルデータの第三者提供を許諾したスマートフォン・ユーザーで、NTTドコモ以外のユーザーも含まれます。 
 社会調査研究センターとNTTドコモが共同開発した「dサーベイ」により、全国の18歳以上の約6,000万人を母集団とした、完全なランダムサンプリング(無作為抽出)調査が実施できるようになりました。
 社会調査研究センターでは、すでに、21年衆院選や22年参院選をはじめ、各種の選挙で「dサーベイ」による情勢調査を実施し、その精度を立証し続けてきました。今月からは、内閣支持率などを検出する世論調査も「dサーベイ」に切り替え、「SSRC全国世論調査」として定例化していきます。

■岸田内閣 : 支持率26% vs 不支持率62%
 「dサーベイ」による、第1回目のSSRC全国世論調査での岸田内閣支持率は26%、不支持率は62%となり、不支持が支持を大きく上回りました。
 〔図1〕をご覧ください。年齢別の内閣支持率・不支持率を示しています。支持率に関して、70以上や60代の高年齢層がやや高い、いわゆる「老高」型がみられるものの、不支持率については全年代共通に6割前後の多数を占めており、フラットな形状を示しています。まさに、「ロスト・オール」といった様相です。


〔図1〕岸田内閣支持率・不支持率(年齢別)



■物価高対策:内閣不支持層で「評価しない」が87%  
 内閣不支持が支持を大きく上回った要因は何なのか。時宜の政治諸課題への政権の対応をどう評価するかと、内閣支持・不支持とのクロス結果で確認してみましょう。〔表1〕は、「新型コロナウィルス対策」、「水際対策(入国制限)の緩和」、「全国旅行支援」、「物価対策」への評価を、内閣支持層と不支持層とに分けて集計したものです。表中、それぞれの課題に関する「評価する」・「評価しない」の下の( )内に表示した数値は、全体の結果に相当します。


〔表1〕岸田内閣支持・不支持×課題対応への評価


 上段の支持層をみると、コロナ対策、水際対策の緩和、全国旅行支援については、「評価する」や「妥当だ」が多数を占めていますが、物価対策に関しては「評価しない」が「評価する」を上回っています。下段の不支持層は、水際対策の緩和で肯定的評価と否定的評価が拮抗しているものの、他の3項目については否定的評価が多数を占めています。わけても、物価対策に関しては「評価しない」が87%で、「評価する」はわずか2%にすぎません。
 確かに、今回の調査で採用した他の政治的イシューに対しても、(全体で6割以上を占める)内閣不支持層の評価は否定的です。例えば、旧統一教会問題関連で、「細田衆議院議長が説明責任を果たしているか」に対して「果たしていない」が90%、「山際経済再生担当相ついて」は「辞任すべきだ」が78%などとなっています。ただ、これらのイシューについては、不支持層のみならず回答者全体でも、それぞれ「果たしていない」が79%、「辞任すべきだ」が65%と大多数を占めています。
 物価対策に関する評価ついて、年齢別の結果を確認すると、「評価しない」は18~29歳=63%、30代=64%、40代=69%、50代=71%、60代=71%、70歳以上=63%と、すべての年齢で6割を上回っており、先の〔図1〕に示した、不支持率に関する年齢別の形状と類似していることがわかります。


■国葬・旧統一教会問題への受け止め方に年齢差
 物価対策への評価と同様に、「日銀の金融緩和政策」に関しても、「見直すべきだ」の比率は、全体で57%をはじめとして、18~29歳=56%、30代=51%、40代=53%、50代=57%、60代=58%、70歳以上=65%と多数を占めており、値自体にも年齢間の大きな相違は存在しません。
 経済的なイシューとは対照的に、安倍元首相の国葬や、旧統一教会問題といった政治的イシューに関しては、顕著な年齢差が見受けらます。〔図2〕を参照してください。図中の実線(―)は、安倍元首相の国葬が実施されたことに対して、「実施すべきではなかった」とする回答の比率を年齢別にプロットしたものです。否定的意見は全体で55%と多数を占めましたが、若年層、とりわけ18~29歳の最若年層では32%にとどまります。18~29歳では、「実施してよかった」と「問題はあったが、実施しないよりはよかった」の合計が51%と、全年代で唯一過半数を上回っています。


〔図2〕国葬および統一教会問題への評価(年齢別)


 図中の点線(…)は、旧統一教会問題をめぐる山際経済再生担当相について「辞任すべきだ」の比率をプロットしています。全体で65%を占める「辞任すべきだ」比率の年齢別の形状は、直線的な右肩上がり、すなわち「若低-老高」型を示しています。政治家のスキャンダルへの反応の相違が明確に現れています。この問題をスキャンダルだと認知するか、しないかという次元の違いなのかもしれません。
 

「岸田首相の1年間を採点すると?」「岸田首相に言いたいこと」(自由記述回答)はこちら

10月22-23日全国世論調査の質問と回答
 

  全体 男性 女性
問1 あなたは、岸田内閣を支持しますか。
 

支持する

26% 27% 24%
 

支持しない

62% 65% 59%
 

答えない

13% 8% 17%
問2 あなたは、岸田政権の新型コロナウイルス対策を評価しますか。
 

評価する

19% 21% 16%
 

評価しない

38% 41% 33%
 

どちらとも言えない

42% 37% 49%
 

答えたくない

2% 1% 2%
問3 政府は、新型コロナウイルスの水際対策として実施している入国制限を緩和しました。あなたは、どう思いますか。
 

妥当だ

42% 44% 39%
 

入国制限を撤廃すべきだ

9% 11% 6%
 

緩和しすぎだ

35% 34% 36%
 

わからない

13% 10% 18%
 

答えたくない

2% 1% 1%
問4 あなたは、政府が始めた「全国旅行支援」を評価しますか。
 

評価する

38% 39% 37%
 

評価しない

44% 46% 41%
 

わからない

17% 15% 21%
 

答えたくない

1% 1% 1%
問5 岸田首相は、宗教法人法に基づいて旧統一教会(世界平和統一家庭連合)を調査すると表明しました。あなたは、政府が旧統一教会への解散命令を裁判所に請求すべきだと思いますか。
 

請求すべきだ

76% 80% 73%
 

請求する必要はない

6% 6% 5%
 

わからない

16% 13% 20%
 

答えたくない

2% 1% 2%
問6 あなたは、細田博之衆議院議長が旧統一教会との関係について説明責任を果たしていると思いますか。
 

説明責任を果たしている

4% 5% 2%
 

説明責任を果たしていない

79% 81% 77%
 

わからない

15% 12% 19%
 

答えたくない

2% 1% 1%
問7 旧統一教会の問題では、山際大志郎経済再生担当相の辞任を求める意見も出ています。あなたは、山際氏について、どう思いますか。
 

辞任すべきだ

65% 70% 59%
 

辞任する必要はない

11% 13% 8%
 

わからない

21% 15% 30%
 

答えたくない

2% 1% 2%
問8 安倍晋三元首相の国葬が実施されました。あなたは、どう思いましたか。
 

実施してよかった

14% 17% 9%
 

問題はあったが、実施しないよりはよかった

21% 21% 22%
 

実施するべきではなかった

55% 55% 55%
 

わからない

7% 5% 10%
 

答えたくない

1% 1% 1%
問9 歴史的な円安になっています。あなたは、日銀の金融緩和政策について、どう思いますか。
 

続けるべきだ

18% 21% 14%
 

見直すべきだ

56% 61% 50%
 

わからない

24% 17% 34%
 

答えたくない

1% 0% 2%
問10 あなたは、岸田政権の物価対策を評価しますか。
 

評価する

9% 10% 7%
 

評価しない

69% 72% 65%
 

わからない

20% 17% 26%
 

答えたくない

1% 1% 1%
問11 中国共産党大会が開かれ、習近平国家主席が台湾統一へ向け武力行使も辞さない考えを示しました。あなたは、中国が台湾に軍事侵攻する不安を感じますか。
 

強い不安を感じる

48% 54% 41%
 

ある程度の不安は感じる

42% 40% 47%
 

不安は感じない

3% 3% 2%
 

わからない

5% 3% 9%
 

答えたくない

1% 0% 1%
問12 あなたは、どの政党を支持しますか。
 

自民党

23% 27% 18%
 

立憲民主党

7% 9% 6%
 

日本維新の会

8% 10% 7%
 

公明党

3% 3% 3%
 

共産党

3% 2% 3%
 

国民民主党

2% 3% 1%
 

れいわ新選組

3% 3% 3%
 

社民党

1% 0% 1%
 

NHK党

1% 1% 0%
 

参政党

1% 2% 1%
 

その他の政治団体

0% 0%
 

支持政党はない

42% 36% 50%
 

答えたくない

6% 3% 8%

(注)小数点以下を四捨五入。0%は0.5%未満。空欄は回答なし。無回答は省略。

<調査の方法>  社会調査研究センターがNTTドコモの協力を得て開発した新たなインターネット調査方式「dサーベイ」で実施した。NTTドコモのdポイントクラブ会員を対象とするアンケートサー ビス「プレミアパネル」を利用し、全国約6000万人の母集団(18歳以上)から調査対象者を無作為に抽出。調査への協力を依頼するメールを10月22日午後5時から配信し、3072人から有効回答を得た。