調査実績

7月18日実施 全国世論調査の分析と結果

「新ミックス・モード調査」による有権者の政治意識の探索(7.18調査)
  ― 30代は、野党(旧民主党)拒否世代か ―

 

松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)

 
 社会調査研究センターでは、2020年7月18日(土)に、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)を対象とするショートメールと固定電話を対象とするオートコールとを複合させた、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 方式」を採用しています (調査方法の詳しい解説については、「社会調査研究センターの『新ミックス・モード調査』」https://ssrc.jp を参照していただきたい) 。

 新方式のノン・スポークン調査による全国世論調査は4月から開始し、すでに5回実施しました。このリポートでは、定例の内閣・政党支持や、今回のトピック質問の結果を中心に、有権者の政治意識を探索します。  
 〔表1〕は、5回の調査における、安倍内閣の支持率および主要政党の支持率を示しています。5月下旬の27%から前回6月の36%へ、回復傾向にあった内閣支持率は、今回再び32%に低下しました。「Go Toトラベル」キャンペーンをめぐる政府の対応が影響したように思われます。
 政党支持率については、自民党の支持率が若干減少し29%に、支持政党なしの無党派層が36%に増加し多数派となりました。立憲民主党は、国民民主党との合流協議が進行中ですが、支持率はやや減少傾向にあります。一方、日本維新の会は、5月に支持率が急増してから二桁を維持し続けています。
 

〔表1〕内閣支持率と政党支持率の推移


■突出する30代の内閣支持率
 ここからは、年齢を指標に詳しく見ていきます。〔図1〕は、直近3回の安倍内閣支持率の推移を年齢別にまとめたものです。支持率が27%に低落した5月の、右肩下がりの逆年功型=逆J字型の支持構造(実線―)は、36%に回復した6月にはさらに極端な「若高-老低」型(点線)を示しました。すなわち、18~29歳の若年層から50代の中年層まで、支持率が大きく上昇したのに対して、60代や70歳以上の高年層は5月の水準にとどまったままでした。
 

〔図1〕安倍内閣支持率(年齢別)


 32%に減少した今回(7月)の支持構造(二点鎖線)は、30代を例外として、6月に支持率が大きく上昇した18~29歳や40代が再び5月の水準に低落し、それほど変動しなかった60代や70歳以上との差が縮まったため、全体がフラットな形状にシフトしました。ただ、30代だけは別です。18~29歳と40代において、10~11ポイントの大幅な減少という共通傾向が存在するにもかかわらず、30代は減少どころか若干の増加を示しています。30代の突出傾向を、どう解釈したらいいのでしょう。
 先ず考えられるのは、今回の30代の比率がいわゆる外れ値であるという可能性です。言い換えれば、サンプル(回答者)バイアスということですが、男女比や年齢構成比に関しては、前回の調査とほとんど相違はありません。5月から、調査の日程を毎月下旬の土曜日の同一時間帯に固定して以降、回答者の構成はとても安定しています。
 次に、内閣支持との相関度の高さが想定される質問項目の回答結果はどうなっているでしょうか。「新型コロナウィルス問題に対する安倍政権の対応」質問における、「評価する」の比率は、18~29歳が20%、30代が21%、40代が18%で、30代の突出は確認できません。自民党の支持率も、18~29歳=33%、30代=32%、40代=27%ときれいな逆年功型を示しています。推理は迷宮入り寸前です。

■野党(旧民主党)拒否世代
 今回の調査では、立憲民主党と国民民主党という旧民主党勢力の合流について、三択で質問しました。全体の結果は、「合流すべきだ」が30%、「合流する必要はない」が15%、これに対して「関心がない」が54%と多数を占めました。〔図2〕の点線は、このうち「合流すべきだ」の比率を年齢別に示したものです。実線は、先ほどの年齢別内閣支持率です。野党が合流すべきだとする期待度は、若年層の中でも30代が際立って低く、2つのグラフの形状が上下のシンメトリーになっています。
 

〔図2〕内閣支持率と野党合流期待率(年齢別)

 30代の安倍内閣支持は、野党否定、わけても旧民主党への拒否感の裏返しなのでしょうか。考えてみれば、旧民主党が政権を獲得した2009年から11年が経過し、20代だった若者も、すでに30代を迎えています。当時、有権者の仲間入りをし、初めて選挙で投票した彼らにとって、民主党政権時代はライフステージにおける最も重要な政治的社会化過程に相当します。その実体験は政治的経験として内面化され、政治世代=「野党(旧民主党)拒否世代」が形成されたのかもしれません。
 経年データに基づく、丁寧なコホート分析が望まれるところですが、この想定が的外れでなければ、彼ら30代、すなわち、「民主党政権世代」には、今後何があろうとも「野党(旧民主党)勢力には決して投票しない」というコア層が存在し続けるように思われます。

■世論調査の実施主体は ? 
 さて、世論調査をめぐっては、フジテレビと産経新聞の委託先による架空回答が明らかになり、メディア全体への不信感が広がっているように思われます。今回、携帯(スマートフォン)・ショートメール調査(回答者数735人)において、世論調査の実施主体に関する質問を採用しました。〔表2〕は、世論調査の今後のあり方についての回答結果を示しています。全体では「今まで通り報道各社が単独で実施すべきだ」が23%、「報道各社が合同で実施すべきだ」が31%、「報道機関ではなく第三者機関が実施すべきだ」が34%と分かれたものの、年齢にブレークダウンすると、18~29歳、30代、40代の比較的若い年代においては「第三者機関」が多数を占めました。オールドメディアを中心とするマスコミへの批判的スタンスが示唆されます。とりわけ、30代の「第三者機関」比率は、53%と唯一過半数を越え突出しています。先ほどの野党(旧民主党)に対する拒否感と同じ脈絡が介在していると推測されます。
 因みに、三つの選択肢ごとの内閣支持率・不支持率を比較すると、「各社が単独で実施すべき」派は支持率=25%・不支持率=70%、「各社が合同で実施すべき」派は支持率=28%・不支持率=65%と不支持が大きく上回っているのに対して、「第三者機関が実施すべき」派の内閣支持率は49%・不支持率が45%で、相反する結果になっています。オールドメディアに対するマイナス・イメージが、ここからも確認できるでしょう。
 

〔表2〕「世論調査の実施主体は?」


 

「安倍首相にいつまで続けてもらいたいか」に対する自由記述ついてはこちら



7月18日全国世論調査の結果は以下の通りです。







 

「毎日新聞提供」