11月7日実施 全国世論調査の分析と結果
際立つ若者の現状肯定志向
「若高 ↘ 老低」構造の意味を考える
社会調査研究センターでは、11月7日(月)に、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)を対象とするショートメールと固定電話を対象とするオートコールとを複合させた、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 方式」を採用しています (調査方法については、「社会調査研究センターの『新ミックス・モード調査』」https://ssrc.jp を参照してください) 。
ノン・スポークン方式による世論調査は4月から開始し、今回は9 回目に相当します。
■突出する若年層(18~29歳)の支持率
今月の菅内閣支持率は57%で、発足直後の9月調査の64%から7ポイントの減少となりました。トータルの支持率の減少度合いはそれほど大きくありませんが、年齢別にみると、明確な変化が存在しています。〔図1〕を参照してください。
〔図1〕菅内閣および自民党の支持率(年齢別)
図中の実線は、今回の調査における菅内閣の年齢別支持率を示しています。9月調査の結果(点線)と比較すると、40代以上の中高年層では支持率が減少しているのに対し、30代は横ばい、19~29歳の若年層については逆に上昇しています。グラフの形状も、9月の結果がほぼフラットであるのとは対照的に、11月調査の結果は顕著な右肩下がりの「若高↘ 老低」型を示しています。18~29歳と70歳以上との比率の絶対値の差は32ポイントと非常に大きく、若者の高支持率に支えられていた安倍内閣当時と比べても、右肩下がりの急傾斜の角度が大きくなっています。
若年層での突出傾向は、自民党支持率をみると、さらに際立ちます。図中の二点鎖線は、今月の自民党支持率を年齢別にブレークダウンした結果です。30代以上は年齢による相違が存在しないフラットな構造にある中で、18~29歳のみが顕著に高くなっています。絶対値にも20ポイント以上という大きな開きが存在しています。
若者における、他の年代と異なるこの傾向は、意識やメンタリティの次元に該当することなのか、はたまた、調査に対する反応レベルに起因することなのか。彼らが菅内閣を「支持する」ことや「自民党」を支持することには、単なるデフォルト=正解回答の選択を越えた政治的志向が込められているのでしょうか。それとも、スマートフォンが身体化した若者にとって、「支持する」も「自民党」も、最初の選択肢を条件反射的にタップしているに過ぎないのでしょうか。
■年層差:意識の亀裂の反映か ?
それでは、今回の調査で採用した他の質問に関する結果から、年層(年功)差が目立つ回答を確認してみましょう。
11月調査で設定した九つのトピック質問の中で、顕著な年層差が存在するのがQ7とQ8の日本学術会議関連の回答結果です。〔表〕は、「Q7 : 菅首相が、日本学術会議の新しい会員として推薦された学者のうち6人の任命を拒否したこと」に対して「問題とは思わない」とする比率、および、「Q8 : 菅政権が日本学術会議のあり方の見直しを検討していること」について「適切だ」とする比率を、年齢別にまとめています。
〔表〕日本学術会議問題(年齢別)
双方とも明確な「若高 ↘ 老低」型構造が存在しています。因みに、日本学術会議関連の回答と内閣支持・不支持とのクロス結果を算出すると、(Q7の)任命拒否を「問題だ」とする人たちの菅内閣支持率=14%・不支持率=89%、「問題だとは思わない」人たちの内閣支持率=78%・不支持率=8%、(Q8の)学術会議見直しを「適切だ」とする人たちの内閣支持率=78%・不支持率=9%、「適切ではない」という人たちの内閣支持率=17%・不支持率=87%で、このイシューが内閣への支持と不支持とを弁別する要素となっていることがわかります。再び〔表〕をみると、とりわけ若年層での「(任命拒否)を問題だとは思わない」比率と「(学術会議の見直しは)適切だ」比率の高さが目立ちます。これらを考え合わせれば、若者の菅内閣支持や自民党支持は、彼らが現政権の政治姿勢を肯定し、既成の政治を受容していることの反映であると推測されます。
それにしても、学術会議問題への賛否と菅内閣への評価との関係にみられる有権者間での意識の相違は、アメリカ大統領選をめぐる共和党支持者と民主党支持者間の亀裂を連想させます。
■「トランプ vs バイデン、 どちらが好ましいか」
さて、その大統領選挙ですが、なかなか当選者が確定しない中で、「トランプ氏とバイデン氏のどちらが日本にとって好ましいか」を聞いた結果を、年齢別にまとめたものが〔図2〕です。ここにも明確な年層差が存在しています。
〔図2〕トランプ v.s バイデン:どちらが好ましいか(年齢別)
トランプ氏の「若高 ↘ 老低」vs バイデン氏の「若低 ↗ 老高」という対照的な構図で、わけても、トランプ氏に関する右肩下がりの年層差は顕著です。ただ、この形状は、アメリカ国民にみられる傾向とは全く逆の構図になっています。現地の世論調査や出口調査結果によれば、アメリカ国民における支持動向は、トランプ支持は高年層で高い「若低 ↗ 老高」型、バイデン支持は若年層で高い「若高 ↘ 老低」型です。
日本の若年層におけるトランプ評価の高さは、少なくともアメリカ国民の判断とは文脈が異なるであろうことはわかりますが、何に起因しているのでしょうか。トランプ氏のパフォーマンスやイメージに反応しているのでしょうか。〔図2〕のトランプ支持の形状と先に見た〔図1〕の菅内閣支持率の形状が類似していることがひとつのヒントになるかもしれません。政治社会の現状を肯定し、既成事実を許容する、言い換えるならば、変化を望まず現状の継続を望んでいるのでしょうか。とりあえずは「現状肯定・受動的態度」と定義しておきたいと思います。
「米大統領選に関する自由記述回答」についてはこちら
11月7日全国世論調査の結果は以下の通りです。
「毎日新聞提供」