調査実績

12月12日実施 全国世論調査の分析と結果

内閣支持率は世情の写し鏡
菅内閣 、コロナ拡大で「支持」と「不支持」が逆転 ­

松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)

 

 社会調査研究センターでは、12月12日(土)に、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)を対象とするショートメールと固定電話を対象とするオートコールとを複合させた、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 方式」を採用しています (調査方法については、「社会調査研究センターの『新ミックス・モード調査』」を参照してください) 。
 ノン・スポークン方式による世論調査は4月から開始し、今回は10 回目に相当します。  
 
■「支持」から「不支持」への転換点は40代と50代の間に
 今月の菅内閣支持率は40%で、11月の57%から17ポイント低落しました。発足直後(9月調査)の64%からは24ポイントの減少となりました。不支持率は49%に上昇し、菅内閣発足後、初めて支持率と不支持率が逆転しました。

〔図1〕菅内閣支持率・不支持率(年齢別:’20.12)


 〔図1〕は、支持率と不支持率の年齢別グラフです。18~29歳から40代までの比較的若い年代では「支持」が「不支持」を上回っていますが、50代で「不支持」が逆転し、「不支持」と「支持」の開きは年齢の上昇とともに大きくなっていきます。年代ごとの「支持率」-(マイナス)「不支持率」を算出すると、18~29歳: + 6、30代: + 9、40代: + 5、50代: -16、60代: -19、70歳以上: -24で、40代と50代の間に「支持」から「不支持」への転換点があるようです。

 ところで、〔図1〕の形状は11月調査における「トランプvsバイデン」の構図に酷似しています。「トランプ氏とバイデン氏のどちらが好ましいか」を聞いた結果を年齢にブレークダウンすると、18~29歳から40代まではトランプ派がバイデン派を上回るのに対して、50代からはバイデン派が逆転し、60代、70歳以上へとバイデン>トランプの差が大きくなっていました。トランプ派からバイデン派への転換点が40代と50代の間というのも全く同じです。菅内閣支持派≒トランプ支持派、菅内閣不支持派≒バイデン支持派、やや強引な見立てですが、有権者諸兄はどう思われるでしょうか。

 

■「若高-老低」型の基調構図は変わらず
 次に〔図2〕を参照してください。菅内閣発足後の3回の調査における支持率を年齢別に示したグラフです。11月調査(図中の点線)の18~29歳の特異値(80%)を除けば、右肩下がりの「若高­老低」型という、安倍内閣からの基調形状を維持しながら、9月(64%)↘11月(57%)↘12月(40%)へと、平行移動で支持率が低落していることがわかります。

〔図2〕菅内閣支持率(年齢別)

 年層差ないし年功差に注目すると、今回採用したトピック質問の中で、年齢による相違が最も顕著だったのが、いわゆる「桜を見る会」問題でした。〔図3〕は、「『桜を見る会』前夜祭の問題に関する安倍前首相のこれまでの説明に納得できますか」に対する回答結果を年齢別にまとめたものです。ただし、「納得できる」については、わずか9%に過ぎないのでカットし、「納得できない」= 66%と「関心がない」= 25%の二つの回答を取り上げています。

〔図3〕「桜を見る会」に関する安倍前首相の説明について

 前夜祭の費用の補填(ほてん)に関して、「補填したという事実はない」と答弁してきた安倍前首相のこれまでの説明に「納得できない」とする回答の比率は、急こう配の右肩上がり直線を示しおり、18歳~29歳の最若年層と60代および70歳以上の高年層との間には30ポイント以上という大きな相違が存在します。一方、この問題に「関心がない」という回答は、それとは逆の、右肩下がりの「若高­老低」型で、内閣支持率や自民党支持率と同様の形状になっています。また、18~29歳では、「関心がない」の比率が「納得できない」のそれと拮抗しています。

 

■内閣支持率は「世情」の写し鏡
 菅内閣の支持率は、われわれの調査だけでなく、今月(12月)に入って実施された他社の調査結果においても低落傾向にあります。その理由に関しても、新型コロナの感染拡大にともない、菅政権のコロナ対策に対する評価が下がったことが要因であろうという解釈で共通しています。
 それでは、今回の調査で採用したコロナ関連の質問と、内閣支持・不支持とのクロス集計結果を確認してみましょう。〔表〕を参照してください。各コラムは左から右へ、「Q.菅政権の新型コロナウィルス対策を評価しますか」に対する「評価する(14%)」・「評価しない(62%)」、「Q.新型コロナウィルスに対する日本の医療・検査体制に不安を感じますか」に対する「感じる(69%)」・「感じない(17%)」、「Q.政府の『GoToトラベル』事業についてどう思いますか」に対する「継続すべきだ(19%)」・「中止すべきだ(67%)」の順で、内閣支持率・不支持率を表示しています。いずれの質問においても、二者択一の回答方向が支持と不支持とを弁別していることが読み取れます。

〔表〕コロナ関連問題×内閣支持・不支持

 菅政権のコロナ対策への評価が、内閣への「支持・不支持」に直結していると推測されます。加えて、「(コロナ対策を)評価しない」、「(医療・検査体制に)不安を感じる」、「(GoToトラベルを)中止すべき」の比率が、いずれも6割以上で多数を占めていることからは、コロナ禍拡大への懸念の高さが示唆されます。内閣支持率には、政権への評価に止まらず、有権者が感じるところの、自分の身のまわりを含めた社会の有様(ありよう)が投影されていると思われます。内閣支持率は、まさに「世情」の写し鏡と言えるでしょう。

 

 

「新型コロナウイルス第3波に関する自由記述回答」についてはこちら
 

12月12日全国世論調査の結果は以下の通りです。

 










 

「毎日新聞提供」