調査実績

1月16日実施 全国世論調査の分析と結果

「ウィルス感染が拡大したのは…」: 受け止め方に年代差
- 30代~50代の実年世代に、政権から離反の兆し -

 

松本 正生(社会調査研究センター代表取締役社長)

 
 社会調査研究センターでは、1月16日(土)に、RDD方式による全国世論調査を実施しました。調査の方法は、携帯電話(スマートフォン)のショートメール機能と固定電話へのオートコールとを複合させた、新しいミックス・モード手法 = 「ノン・スポークン (Non-spoken) 方式」を採用しています (調査方法については、「社会調査研究センターの『新ミックス・モード調査』」https://ssrc.jp を参照してください) 。
 ノン・スポークン方式の世論調査は20年4月から開始し、今回は11 回目になります。  
 
■支持率続落の構図 : すべての年代で「支持」と「不支持」が逆転
 今月の菅内閣支持率は33%で、12月の40%から7ポイント低下しました。発足直後(9月調査)の64%からは、31ポイントという大幅な低落となりました。不支持率は57%(12月は49%)に上昇し、不支持率と支持率の差はさらに広がりました。
 〔図1〕は、支持率・不支持率の年齢別グラフです。12月の調査では、全体の支持率が対前月で17ポイントと大きく低下し、支持率(40%)と不支持率(49%)の関係に逆転が生じましたが、18~29歳から40代までの比較的若い年代では「支持」が「不支持」を上回っていました。今回は、トータルの減少幅は7ポイントにとどまったものの、すべての年代で「支持」と「不支持」が逆転しました。しかも、18~29歳を除けば、どの年代においても不支持率が支持率を大きく上回っており、いわばキャッチ・オール(catch all)ならぬルーズ・オール(lose all)という形状です。不可逆的な変動が起きているのかもしれません。


〔図1〕菅内閣支持率・不支持率(年齢別)

 

 支持率が続落した理由は、コロナ対策へのマイナス評価にあることは明らかです。菅政権の新型コロナウィルス対策に関して、「評価しない」の回答は12月の62%から66%に増加し、「評価しない」人たちの内閣不支持率は、73%(12月)から81%に上昇しました。1月7日と13日に発令された緊急事態宣言についても、「遅すぎる」が71%と大多数を占めています。

 

■支持率続落の構図 : 30代~50代で低落が顕著、60代以上には変化なし
 次に〔図2〕を参照してください。菅内閣発足後の支持率を年齢別に示したグラフです。20.9(64%) ↘ 20.12(40%) ↘ 21.1(33%)へ、ゆるやかな「若高­老低」型、すなわち右肩下がりの基本構造を維持しながら、平行移動で支持率が低落していることがわかります。

〔図2〕菅内閣支持率(年齢別)

 前回(20.12)と今回(21.1)の形状を比較すると、30代~50代にかけての実年世代で支持率の低落が顕著であるのに対して、60代以上の中高年世代の支持率に変化はありませんでした。ウィルス感染に対する危機感や懸念の高いはずの中高年層の支持率が低下しなかったのはなぜなのか。菅首相が約束するワクチンへの期待の反映なのでしょうか。

 

■感染拡大の理由をめぐり、受け止め方に年代差
 今回の調査では、「新型コロナウィルスの感染がここまで拡大したことについて、あなたの考えは ?」と問い、その理由として三つの選択肢を設定しました。全体の回答比率は、「行政の責任が重い」= 40%、「感染対策を守らない人たちが悪い」= 30%、「新しいウィルスなので仕方ない」= 29%となり、世間の受け止め方は三分されました。
 これらのうち、年層差が際立ったのが、「行政の責任が重い」と「新しいウィルスなので仕方ない」でした。〔図3〕に、年齢別の比率をプロットしています。「感染対策を守らない人たちが悪い」に関しては、年代による比率の相違がほとんどないフラットな形状なのでカットしました。コロナウィルスの感染拡大という社会の現実を前に、60代以上の中高年と18歳~29歳の若者との間に、中高年層は「行政の責任」、若年層は「仕方ない」という、受け止め方の大きな違いが存在します。

〔図3〕コロナ感染拡大の理由(年齢別)

 一方、特定の回答に比率が集まる若者や中高年とは異なり、30代~50代の実年層では、三つの選択肢の比率が拮抗しています。割り切れなさとやり場のない思いを抱いていることが示唆されるでしょう。先ほどの年齢別支持率(〔図2〕)でみたように、今回、内閣支持率の低下の度合いが大きかったのが、まさに30代~50代でした。社会の担い手として日々苦難する実年世代が、時の政権から離反しつつあるのです。「国民に寄り添う」菅内閣の真価が問われる局面でしょう。


■ワクチンには期待するものの…
 菅首相は、新型コロナウィルスのワクチン接種が2月下旬までに日本国内で始まるとする見通しを示しました。今回の調査ではこの問題を取り上げ、「ワクチンに期待するか」を問いました。全体の結果は、「期待する」が72%、「期待しない」が28%で、期待が圧倒的多数を占めました。〔表〕は、「期待する」・「期待しない」ごとの内閣支持・不支持の比率を示しています。ワクチンには期待するものの、果たして菅首相が言明する通りになるかどうか、世論は半信半疑というところでしょうか。

〔表〕ワクチンへの期待×内閣支持・不支持

   

「新型コロナウイルスへの政府対応に関する自由記述回答」についてはこちら
 

1月16日全国世論調査の結果は以下の通りです。

 





 

「毎日新聞提供」